マニー パネルディスカッション

日本と台湾の歯科診療・根管治療の相違点について

日本・台湾を代表するドクターが、双方の歯科事情と高難度と言われる根管治療について意見を交わします。

座談会

MANI PANEL DISCUSSION

パネリストプロフィール

Panelist

Panelist

林 炳宏先生

Lin,Ping Hong

台湾・台中開業
前台中市歯科医師公会常務理事
通訳:張サク(マニー社)

Panelist

Panelist

岡口 守雄先生

Okaguchi Morio

東京・半蔵門開業
日本臨床歯科学会(SJCD)理事
通訳:陳佳珍 (明延貿易)

Moderator

Moderator

荒川 晃一(マニー)

Arakawa Koichi

デンタル事業本部
海外営業グループ 主任

TOPIC01

自己紹介をお願いします。

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皆様こんにちは。本日は日本と台湾を代表する岡口守雄先生、そしてLin Pin Hung(林炳宏)先生にマニー清原工場へお越し頂きました。日本と台湾の歯科診療や根管治療の相違点、更にはマニーへの提言についてお話を伺いたいと思います。
それではまず初めに、お二人の自己紹介からお願いします。

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皆さんこんにちは。台湾出身の林炳宏です。
台湾の台中市にある中国医科大学歯学部の大学院を卒業し、開業してから34年経ちました。主に根管治療を診療してまいりました。大学院に入ったのは54歳でした。現在、私は台中市で合計14人の医師パートナーと診療を行っています。すべての専門分野をカバーしており、毎日約 100 ~ 120 人の患者が診察を受けています。現在、マニーをはじめとして様々なメーカーの講師を務めています。また、毎年PGY(Post Graduation Year)コースを開催しており、不定期で講義も行っています。

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岡口守雄と申します。
東京の半蔵門で開業医をしております。大学卒業後、数件の医院で経験を積み、自身のクリニックを持ちました。私のクリニックには、常勤2名と非常勤1名の医師、衛生士2名、そしてアシスタントスタッフがおります。診療のメインは根管治療をはじめとする歯内療法ですが、私はGP(General practitioner)でもありますので全ての診療を行っています。また、たくさんの機会に恵まれ、毎週のように講演活動を行っています。
マニーのウェビナーも2回ほど行いましたが、いずれも1,500名以上の方にご参加いただきました。本当にありがたいことです。台湾や世界各地の学会でも頻繁に講演を行っております。
Lin先生も台北で行った私のマイクロスコープのハンズオンコースを受けてくださっていますので、私のことを良く理解してくれていると思います。
ところでLin先生、お聞きしたいのですが、54歳から大学院に行かれたという背景を教えて頂けますか?

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はい、大学生の時にお世話になった先生から助教のお話をいただきました。そのため、講師として学生を教える立場でもありながら、大学院生でもあった時期があったというわけです。

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ありがとうございます。お二人の自己紹介からも相違点がすでに見られました。
共通点は教育活動や自己研鑽を行っていること、そして、違う点はお互いのクリニックの運営業態ですね。Lin先生は何名もの先生をパートナーとしながら、企業経営者のように組織マネジメントもされています。一方で、岡口先生は根管治療の第一人者として、日本でも最高品質の医療技術を患者に提供されているプロフェッショナルでもいらっしゃいますね。

TOPIC02

歯科医師を志したきっかけは?

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それでは、そのようなお二人にそもそも歯科医師を志したきっかけを、当時を思い出していただきながら振り返って頂きたいと思います。

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はい、私は附属高校から大学に進学し、経済学を専攻していました。
正直なところ、大学時代はスキーのクラブ活動に熱中していたり、当時は学園紛争があったりしましたので、ほとんど大学で経済学を学んだ実感はありませんでした。 卒業する頃になって、私のクラブの先輩たちが大企業に勤める姿を見ていたのですが、私にはあまり向いていないのでは?と感じていました。そこで、自分の意思で自分のやりたい職業を選びたいと思い、100以上の職業を調べました。ある職業紹介の本に、「ものを作ることに喜びを感じる人でなければ、歯医者は勤まらない」という言葉がありました。私は小さい頃から手先が器用だったので、その言葉に共感し、歯科医師に適性があるのでは?と感じて歯科医師を選択しました。

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私は普段から人を助けることが好きで、そのために医療サービス関連の仕事を選びました。
その中で私が根管治療を選んだ理由は、患者の痛みを和らげ、同時に歯を保つことができるからです。これは非常に達成感のある仕事です。学生時代や新卒の頃は、情報が閉ざされていたため、学習の選択肢が少なく、継続的な学習機会が多くありませんでした。
当時の台湾では、卒業後、大部分の歯科医師はクリニックに就職するため、師弟制度による伝承がなく、学習を続けたい医師には良い環境とは言えませんでした。大学時代の教育だけでは十分ではなく、卒業後に治療経験を共有して頂ける先輩がいなければ、医師として知識と能力を向上させることが難しくなります。
私の場合は幸運にも、2人の先輩が根管治療の分野に導いて頂きました。

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なるほど。今ではご自身が教育される立場ですが、昔は教育を受ける立場として振り返った時に、自分が学べる環境が今のように豊富ではなかったということですね。それを受けまして岡口先生が思われることはございますか?

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はい。日本の場合はですね、大学でも様々なことを学びますが、実際の臨床現場で本当に必要な技術は、やはり卒業してから得られるものが多いと思います。私の場合は、歯科大学時代に、知り合いの先生のところにお手伝いにいって学びを深めていました。ですから、卒業するときにはある程度の歯科診療の流れが分かるようになっていました。また、日本の場合は、さまざまな研修コースがあります。補綴、ペリオ、エンドのコースなど、各科を極めた多くの先生方から直接学ぶことができます。私の場合は、その当時有名なスウェーデンのリンデ先生のところへ毎年行ってペリオの最新の知見やテクニックを学んでいました。

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ご自身でその学ぶ環境、機会を作っていったということですね。マニーとしても、より良い製品を多くの先生方に届けたいという思いでおりますので、是非そのような製品紹介の機会を数多く提供し、先生方の診療に貢献したいと考えております。

TOPIC03

歯科医として一番大切にしていることは?

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今度は今現在の話を伺います。歯科医師になり自己研鑽を経た後に、今ご自身が歯科医師として一番大切にしていることについてお伺いいたします。

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特に重要なのは、「患者を自分自身の家族のように扱う」という価値観を持つことと、自己の知識とスキルを向上させることです。従来、医師と患者の関係性は、序列的で、一方的であったと思います。というのも、医師は患者に対し、医師が示した医療計画に全力で協力してもらうことを求めており、一方で患者は無条件でその医療計画を受け入れ、協力するしかありませんでした。現在の医療関係はパートナーシップや家族のような関係で、お互いが相手のために考え、共通の医療目標を設定し、その達成に向けて協力することを目指しています。これにより、双方にとって有益な結果を作りだすことが可能になります。
新人の方に対するアドバイスとしては、やはり卒業後は医療臨床経験が少ないので、様々なルートを通じてより専門的な知識や技術を習得するべきだということです。そして、それに基づいて医療上の義務と責任を果たしていかなければいけないと思います。
歯科医師は、学問は無限であると認識して学び続けることで、患者に対して、そしてこの歯科医師という職称に対して責任を果たすことができると思います。

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昔と今では患者と先生の関係が変化しつつあり、特に今では患者と医師の間でお互いの信頼関係が重要ということですね。
それでは岡口先生、歯科医師として一番大切にされていることをお聞かせ頂けますか?

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はい、それは歯科医師としての良心ではないでしょうか。歯科に来院される方は何かしらの訴えを持っていらっしゃいますので、その訴えに真摯に耳を傾け、最善の医療を提供し患者さんが満足する結果を出し続ける。それには、歯科医師として全てに精通している必要もあります。
全ての歯科治療を世界最高レベルで提供することは大変かもしれませんが、患者さんにとっては掛け替えのない歯ですので、歯科医師として現在出来うる最良の医療を行うための知識や技術の習得は元より、常に自らの技術を見直し、改善・改良することは歯科医師としての良心であると思います。
今行っている私の保存治療も何十年と改善・改良してきた結果の治療ですし、数年で出来た治療ではありませんので、自らの治療を見直すための経験も必要かと思います。その結果として難治性と診断され抜歯されてきた歯の保存が可能となり、冷水痛や自発痛が強い歯の歯髄保存も可能となってきました。今では抜髄処置はほとんど無くなり、これは自らの治療を改善・改良して見直してきた結果だと思います。現在、患者さんが求めることは、自らの歯を可及的に保存して、命ある限り自らの歯で生活することです。そのために歯髄の保存や歯の保存は重要なキーワードであると信じています。

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ありがとうございます。患者さんのためにというのは我々の経営理念にも通じるところがございます。
「患者のためになり、医師の役に立つ製品の開発、生産、提供を通して世界の人々の幸福に貢献する。」ということが我々マニーの企業理念です。そして特に根管治療で使われるファイルを作っているメーカーとしては、先ほどもお話のあった根管治療や保存治療の価値や意義を、より多くの患者にも広く伝えていきたいと考えております。

TOPIC04

開業時のご自身にアドバイスをお願いします。

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それでは次に、もし今からご自身が開業した時に戻れるとしたらと仮定して、当時のご自身に何かアドバイスはございますか?

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そうですね、過去に戻って卒業したばかりの自分にアドバイスができるなら、できるだけ早く専門分野を見つけて、一生懸命学ぶようにと伝えます。また、根管治療科を選ぼうとしているのならば、MTAや回転式器具、顕微鏡を早く使えるようにと伝えたいです。
クリニックの運営に関しては、一人で戦うには厳しい時代になっているので、チェーンストアのようなグループ経営のクリニックに加入してもよいのでは?とアドバイスしたいです。開業コストを節約できれば、継続的に質の高い教育コースや専門的なツールに投資することができます。医療業界で生き抜くためには専門分野のスキルは必要不可欠となります。

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私は歯科大学を卒業したのは30歳を過ぎていましたので、まず開業医で勤務しましたが、今この当時に戻れるとしたら、海外にもっと出て学んでおけばよかったと思いますね。自身にとって可能なことと不可能なことがありますが、自らの理想を求める気持ちが強ければ可能だったかもしれません。今の若い歯科医師にはこれから長い歯科医師人生が始まりますので、さまざまな経験をしてもらいたいと思います。その一つ一つの経験がその後の歯科治療に活かされてくると思います。私の場合は、初めにスカンジナビアのペリオを学び、USCのRaymond Kim先生の補綴治療、そしてマイクロスコープを用いた保存修復から歯内療法へと、メインの治療が移ってきました。この全ての経験が今のエンド治療に活かされていると思います。さまざまな経験をする人生に無駄は無しということでしょうか。

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なるほど。色々な先生がいらっしゃって、様々なスペシャリストへの道がありますね。
Lin先生のように、専門分野をできるだけ早く見つけて、自分のスキルを磨いていくという考え方もあれば、まずは自分がいろいろなものを勉強して知った上で、自分の専門分野をそこから見つけていくという道もあるかと思います。お二方とも今はそれぞれの領域を代表する先生でいらっしゃいますが、そのアプローチも各々違うということで、非常に興味深く伺いました。

TOPIC05

お互いの歯科診療事情をご紹介ください。

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それでは、次の質問です。それぞれお互いの国の歯科診療事情についてお聞かせ頂けますか?

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はい。日本は国民皆保険制度を採用しているため、すべての人が保険証を持ち、定められた負担割合で医療を受けることができます。  残念ながら、根管治療の点数は高くありませんが、そのような状況下でも日本の歯科医師の皆さんは一生懸命に取り組んでいると感じています。 例えば、日本ではかなり前にラバーダムの点数が廃止されましたが、それでも現在ではラバーダムを使用して診療してくれる歯科医師の方々が多くいらっしゃいます。 また、日本では歯科医師の指示により歯石を除去などの予防処置を行う歯科衛生士という資格職があります。 アメリカなどの国でも同様の資格制度があると思いますが、台湾ではいかがでしょうか? 少し特殊な独自の制度を持っているようですので、教えていただけますか?

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はい。1998年以前の台湾では、労働者保険、公務員保険、農民保険などがありましたが、各保険間で情報が共有されていなかったため、国民の健康状態を把握することができませんでした。1998年に全民健康保険が実施されて以降、政府が唯一の保険者となり、全国民が被保険者となることが義務化されました。これにより保険の範囲が拡大し、全国民をカバーするとともに、健康管理とデータ分析も大きく進歩しました。歯科については、政府が医療予算に対して総額制度を採用しているため、原則毎年の医療給付の予算を超えてはならず、超えた場合は割引給付となる仕組みです。ちなみに歯科予算は全医療予算の約6%を占めています。歯科衛生士についてはですね、岡口先生がおっしゃるように台湾では衛生士というポジションはありません。すべての処置は法律により歯科医師が直接行う必要があります。一方でアシスタントを雇うこともできます。そのアシスタントは歯科関連の学科出身である必要はなく、訓練を受けて助手となり、環境の整理整頓、感染防止管理、消毒、患者の受付や予約対応などを行います。

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今、日本ではブリーチングなどの審美的な歯科治療も多く行われていますが、台湾ではそれも全て歯科医師が行うのでしょうか? その辺はいかがですか?

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はい。すべて歯科医師がやっています。

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すべて先生ですか、大変ですね。 でもそちらの方が安心ですよね。 日本では最低限のベースの治療は保険内で定められた範囲ということになり、その保険点数は国の財政との関わりの中で決められますので、おのずと上限があります。 ですから、例えば審美的な要件、セラミックを入れる場合などは、やはり自費の治療でということになるかと思います。

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ありがとうございます。先ほども時代の変化ということで、様々な要因が昔と今では変わりつつあるというお話がありましたが、この保険制度においても、今後期待される変化はありますでしょうか?

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はい、日本の医療制度はまず病気に対する治療が基本になりますので、虫歯や歯周病などの病名が付けられ、それに対する治療が行われます。しかし病気になってからではなく、病気にならないための治療、つまり予防処置に重点を置くべきではないでしょうか。予防歯科の先進国、スウェーデンでは特に若年者のプラークコントロールや定期検診を保険制度に導入して大きな成果を得ていますので、日本も病気を未然に防ぐ予防処置や定期検診を積極的に医療制度に組み入れてもらいたいと思います。

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現在の健康保険制度では、歯科部分は全体の6%しか占めておらず、毎年の費用の増加率も制限されているため、多くの地域で申請点数は歯科医師が期待する額を満たせない状況があります。
また、台湾では1根管の診療に対して申請できる額はおよそ1,100台湾ドルです。(約5,200円/2024年4月現在)その結果、歯科医師は根管治療に対する優先度を下げるしかありません。これらの問題の原因としては、国民が支払う保険料が低すぎるということもあります。全民健康保険は社会保険であって、決して社会福祉ではありません。医療従事者は適切な報酬を得ることで、高品質の医療サービスを提供することができますが、政府はより少ない報酬で、より多くのサービスを提供させることを理想としています。これが現在の台湾の医療制度の難しい部分です。保険料を上げ、医師に適正な報酬与えることで、全民健康保険の持続可能な運営と発展が可能になると思います。

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なるほど。先生が行っている素晴らしい診療も、「社会福祉」という言葉に置き換えられそうなほど、治療に対する価値と得られる成果のバランスが取れていないということですね。すぐには難しいとは思いますが、徐々に良い方向へ進んでいけると良いですね。

TOPIC06

根管治療が難しいといわれる理由は?

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それでは、次に根管治療に焦点を当ててお伺いいたします。数ある診療科目の中でも、一般的に根管治療は難しいと言われていますが、その理由について、お2人のご意見を伺いたいと思います。また、エンドドンティストという認定専門医制度についても、それぞれの違いがあるかと推測いたします。それらの点についてご教示お願いいたします。

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台湾には根管治療の専門医制度があります。専門医になるためには、まず歯内療法学会へ会員申請する必要があります。一定の期間が経過した後、申請者は臨床レポートを提出し、審査に合格すると一般会員になることができます。
一般会員は、厚生省が認定した病院の根管治療科で規定の研修期間を終えたあと、筆記試験と口頭試験を経て、審査に合格すると根管治療の専門医になることができます。しかし、台湾では95%以上の患者は専門医に診てもらうことを求めようとしません。根管治療は難しいですか?という質問には、これは三つの部分に分けて説明できます。まず、患者は自分の歯を保存することを強く望んでいるため、根管治療の成功率には高い要求があります。次に、健康保険の根管治療に対する給付が低すぎるため、歯科医師は時間とコストをかけて根管治療の比率を増やすことに積極的ではありません。
最後に、インプラントや補綴の収入が根管治療よりも明らかに高く、自費収入の中でより高い報酬を得られるため、保険の給付による根管治療は重視されません。これらの状況は、患者が高品質の根管治療を望む第一の点とは異なり、歯科医師が根管治療の患者に接することを避け、新しい知識を学ぶことを望まない結果を生み出しています。むしろ、高報酬のインプラント、補綴、矯正に時間を費やすことを選びます。

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台湾の専門医は何名ぐらいいらっしゃいますか?また、専門医と一般の歯科医師では、同じような根管治療をしたとしてそこに点数の違いはありますか?

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台湾の専門医は約1200人います。※そして実際には、専門医であろうとなかろうと、報酬の点数は同じです。 2、3年前までは、いわゆる紹介料の制度が存在していました。 自分では対処できない症例については、専門医に紹介すると、報酬が約30%上乗せされました。しかし、現在は予算の問題でこの制度は廃止されています。
※従来は約1,200名でしたが、2024年8月現在認定制度が変わり、現在は約324名の国家認定専門医がおります。 差分の歯科医師は多様な単位認定条件に満たせば再申請することができ、最終的に1,000人以上の認定医取得が予測されます。

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それは残念ですね。日本では、根管治療については国が認定する専門医の制度は存在せず、歯内療法の学会などで専門医制度が設けられています。
台湾では、歯内療法の専門医は他の科の専門医資格も取得できるのでしょうか?

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はい。一人の先生が複数の専門を取得することが可能です。また、台湾では国が認証する専門医と、日本のように学会が認証する専門医が存在します。
国が認証可能な専門医は10科目あり、その中には歯内療法も含まれています。

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ありがとうございます。このトピックでは、専門医制度についてお互いの違いが明らかになりましたね。日本では政府が認定する専門医制度が存在しない一方で、台湾ではあるということですね。

TOPIC07

根管治療における成功の決め手は?

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それでは次に、根管治療において、お二人が考える成功の決め手をご教示ください。
また、初心者が陥りやすいミスなどについてアドバイスを頂けますでしょうか?

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私が思う根管治療の成功の決め手は、細菌の除去を念頭に置くことです。すべての処置の目的は細菌を除去することです。これを前提に、より多くの歯質を保持し、よりシンプルな方法とより少ない時間で高効率の治療を達成することを目指します。そして、診断から始めて、適切な患者の歯根を選択し、適切な手順を選び、歯の解剖構造を理解し、さらに高効率の周辺機器(例えば、超音波器具、ニッケルチタンファイル、マイクロスコープ、バイオセラミックなど)を補助的に使用します。すべてが細菌を消滅させる目的を達成するためのものです。
新人医師が陥りやすいミスは、歯の解剖形態を理解していないこと、標準的な操作手順を理解していないこと、使用する器具や材料などの特性を理解していないこと、治療費用に対して過度に心配していること、歯を保存するという意識が十分に強くないことなどです。昨日、岡口先生のクリニックを訪問させていただいて、素晴らしい設備を見させていただき、とても感動しました。多額の費用をかけてでも最新、最高の設備を投資する姿は、すべては根管治療の成功という使命感の下にあるのだと実感いたしました。とても素晴らしいことだと思います。

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ありがとうございます。岡口先生、如何でしょうか?

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まず初めに、根管治療成功の決め手は安全に行うことだと思います。最初に、根管が歯の中で解剖学的にどこに位置しているかを正確に把握してから開けていく必要があります。特にそのためにはCBCTも必要ですね。石灰化している歯などは、天蓋と髄床底が非常に近く、側壁も張り出しています。 そのような根管では、特にミスが起こりやすくマイクロスコープなどの拡大視野下で、本来の根管がどこにあるかを丁寧に切削して根管を見つけていくことが、まず根管治療において重要なことだと思います。
実際に感染した根管の中には細菌がたくさん存在しています。 根管内の組織をマイクロエキスカで取り、それを位相差顕微鏡で調べると、まだ根管内に細菌が残っていることが分かります。 例えば、世界のスタンダードであるEDTAで洗い、次亜塩素酸で洗浄したとしても、根尖部の細菌を完全に死滅させることは難しく、 浮遊している細菌は除去できるかもしれませんが、根尖部周囲の象牙質に認められる多量の細菌は、洗浄だけで死滅させることができないことがわかってきました。 ですから、やはり選択的な機械的拡大、つまり感染している歯質、細菌に汚染されている歯質だけを可能な限り除去することが、根管治療の成功のポイントだと思います。

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なるほど。適切なステップを踏み、解剖学的に理解しながら、最善の設備と材料を巧みに使いこなし、根管治療を進めることが成功の決め手となるということですね。
私たち医療機器メーカーとしても、先生の役に立つ、より良い器具を提供し続けることを目指しています。例えば、私たちが現在ご紹介しているニッケルチタンロータリーファイルのJIZAIは、できるだけ安全で、折れにくいというコンセプトで紹介しています。まだあまり根管治療を行ったことがない先生でも使っていただけるように、という思いを込めています。

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はい、このマニーのJIZAIファイルは非常に根管に追随しやすいですね。その柔軟性が高いという特性が、根管に追従した形成を可能にします。
ファイルをずっと回転していると、硬いものはトランスポーテーションを引き起こしやすくなります。
硬いファイルを用いて湾曲根管などを形成していると、トランスポーテーションが起こってきますが、これは少ないですね。 このように根管内に追従した根管形成ができ、根管を拡大できるという点が、JIZAIの優れた特性だと思っております。

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ありがとうございます。マニーの製品は、ファイルやバーなどをはじめとするとても小さなものですが、それに関わる責任は非常に大きいと感じています。これらは患者の歯や先生の手に直接触れる製品ですから。私たちは歯科材料メーカーとしての責任と誇りを胸に、より良い製品を提供し続けることを目指しています。そして、我々の企業理念である「患者のためになり、医師の役に立つ、製品の生産、開発、提供を通して、世界の人々の幸福に貢献する」に沿って今後とも精進して参ります。

TOPIC08

新製品を購入する時のポイントは?

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それでは次のトピックに移ります。そのような新製品を我々が発表する際に、先生の立場から製品を購入する時のポイントなどがもしございましたら、この場を借りて伺えるとありがたいです。Lin先生、よろしくお願いいたします。

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はい、新製品の購入を決定するポイントは、その新製品の認知度と、自分が求める治療品質を満たすかどうかです。口コミなどの評価・評判なども非常に大切ですし、ブランドロイヤリティも重要です。さらに、出張製品説明会や、セミナーコースを追加することで、歯科医師の印象を深め、購入する機会が大幅に増えると思います。
台湾では、根管治療に対する保険給付が非常に低いため、歯科医師は製品の価格を厳しく見なければならず、結果的に安価な中国製や韓国製の製品に人気があります。これは、品質がなんとか受け入れられる範囲で、且つ価格が非常に低いためです。
そのような中、メーカーや代理店はすべての歯科医師を顧客として見る必要性はなく、ターゲットを絞って、根管治療の品質を向上させ、製品を購入する能力がある歯科医師を対象とするべきと思います。したがって、製品説明会やハンズオンコースの開催は非常に重視すべきです。岡口先生はいかがでしょうか。

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はい、歯科の様々な材料に対する選択基準は多岐にわたりますね。それは論文の信頼性、メーカーの信頼性、口コミなど、さまざまな要素が関わってきます。
ニッケルチタンのファイルについては、私が考えるに実際に体験してみることがそのファイルの特性を最もよく理解する方法だと思います。論文やメーカーの宣伝文句だけでは理解できない部分が多いですね。ですから、使用する先生方に実際に体験してもらい、その良さや有用性を体感してもらうことが重要です。ニッケルチタンファイルについては、このような啓発活動が必要だと思います。それにより、その特性と利点をより深く理解し、適切に活用することができるでしょう。

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なるほど。百聞は一見に如かず。更には百見は一体験に如かず。ですね。
我々も実際の体験に勝る評価はないと思っていますので、そのような体験が出来る場を増やして参ります。

TOPIC09

歯科材料メーカー、マニーに期待することは?

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それでは最後のトピックになります。我々歯科材料メーカー、特にマニーに期待することについて、いくつかお言葉を頂けると幸いです。

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はい、マニーの眼科用のメスは、医科の分野においては圧倒的なシェアを得ています。残念ながら歯科ではあまり使われていませんが、試してみると非常に切れ味が良いことがわかります。まさしくバターにナイフを入れるようにすっと切れる感じで異次元の切味です。ぜひ歯科用にも販売していただきたいと思います。
今は眼科用に開発されたメスだけなので、歯科に特化した剛性、角度、形状のメスも必要かなと思っています。また、マニーでは針付き糸も歯科用に様々な種類を提供し、6-0までのラインナップになっています。今、マイクロスコープを使う先生は7-0を使用し始めています。私自身は8-0から10-0まで使用しています。症例に応じて針の長さやカーブのラインナップも増やして頂ければ更に使いやすくなると思います。今歯科界ではマイクロスコープが急速に普及し始めており、その拡大視野下の治療に対応した製品が必要と思われます。

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ありがとうございます。おっしゃるように、マニーは歯科のみならず、眼科、外科等、様々な医療機器分野の製品を提供しているメーカーですので、相乗効果を発揮しながらより良い製品をご紹介していきたいと思います。Lin先生、最後によろしくお願いいたします。

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はい。マニーはとても長い歴史を持つ極めて専門的なメーカーですが、残念ながら数年前の模倣品の事件により、台湾の歯科医師の間ではその品質の安定性に疑問を持つ時期がありました。しかし現在は改善されつつあります。そして現在、JIZAIファイルの登場で、歯科医師はマニーが新しいニッケルチタンファイルも開発していることが認知されてきました。その一方、マニーはファイルに使われるモーターやガッターパーチャなど、根管治療をする際の他の関連製品をまだ提供していません。よって、セミナーやハンズオンコースを開催する時は、他の会社の製品や、他の代理店と連携して行う必要があります。このあたりを更に拡充して頂けると良いかと思います。そしてこれは講演者としての希望ですが、製品説明会を開催する際に、参加者により良い情報を提供できるように、常に多くの最新資料データを提供して頂きたいと思います。

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ありがとうございます。本当に率直なご意見をいただき、身が引き締まる思いです。
模倣品については、今回の座談会で取り上げた日本と台湾の違いの最後の相違点となりますね。日本では模倣品はほぼ存在しませんが、残念ながら他の国々では模倣品の被害に苦しんでいます。それは本当に悲しいことで、結果として患者に最善の治療が提供されない状況を生み出していました。マニーとしては、そのような模倣品を撲滅するために様々な対策を立ててきました。
台湾では、明延貿易とマニーが総代理店契約を結びまして、模倣品を使用すると適切な診療ができないことなど、様々な啓蒙活動を行いました。そして正規販売店の明延貿易から製品を購入すれば、それは間違いなく本物であるという認識が歯科医師の間で高まってきました。
その結果、台湾では模倣品の流通が大幅に減少したと感じています。
次にコメントを頂きました、製品説明会の資料に関しても、マニー製品の良さ、マニーの価値をより伝えられるように作っていきたいと考えております。例えば、我々が根管治療の意義の一つとして大切にしている、「歯を残す」ということ。
歯を残すということは、衝撃吸収材として機能する歯根膜がクッションのようにそこにあることにより、食べ物を噛んだ時に自然な噛み心地を残してくれる。
根管治療はそういった価値を提供できる素晴らしい治療だということを、その根管治療に使われるファイルを提供しているメーカーとしては、もっと患者レベルまで浸透させていきたいと考えております。そして最後になりますが、我々、マニーには「The Best quality in the World, to the World」という営業方針がございます。ただこの方針は我々マニーだけでは成しえません。
なぜなら我々は製品を作る立場です。言うなれば、我々が出来ることは前半のThe Best quality in the Worldの部分です。そこでマニーに協力頂ける存在が、お二方のような先生方です。それは後半のto the Worldの部分にあたります。つまり、我々が作った製品を、先生方が世界の国々の患者の診療に役立てて頂く。
それにより、我々の「The Best Quality in the World, to the World」は完遂致します。台湾の場合はThe Best quality in the World to Taiwan、そして世界の場合はto the Worldですね。これからもマニーはこの営業方針と経営理念を大切にしながら精進してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
今日は本当にお忙しい中ありがとうございました。

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今回このように、台湾のLin先生、マニーの荒川さんと共にさまざまなお話をさせて頂き、大変有意義な時間となりました。特に台湾と日本のさらなる人的な交流が深まったように感じますし、日本の製品が世界の人々に安心感を持って使って頂けることを誇りに思います。また今後、世界で有用となる新しい製品の開発など協力させて頂きたいと思います。本日はありがとうございました。

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私も期待しております。この度はマニーを訪問し、岡口先生とこのような機会を頂き大変感謝しております。本日はありがとうございました。


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